「生徒指導要録の抄本」
一般的には、あまりなじみがない書類だと思う。
教員や学校で働いている人は、聞いたことがある名前でしょう。
今回は、何に使われるのかよくわからない「生徒指導要録の抄本」について解説します。
Contents
【よくわからない】「指導要録の抄本」ってなに?
まずは、「抄本」の意味を調べましょう。
【抄本】=①一部を抜き書きした本。➁歌集、漢籍などの注釈書。③原本の一部分だけを写し取った書面。戸籍抄本・登記簿抄本・訴訟記録抄本などがある。
ちなみに、公的書類としてよく聞く「謄本」は
【謄本】=①原本の内容を完全に謄写した文書・書面。戸籍謄本・登記簿謄本・公正証書謄本・手形謄本・訴訟記録謄本などがある。
精選版日本国語大辞典より
つまり、
ポイント
「謄本」は、原本完全版のものだが、「抄本」は原本の一部を写したもの、抜粋となる。
では、「生徒指導要録の抄本」とは何かというと。
ズバリ
「生徒指導要録」の一部を抜粋して作成した、書類のことです。
なぜ、「一部を抜粋する」必要があるのか、についてはあとの方にまとめます。
その前にまず、「生徒指導要録とは何か」について、法律を根拠に説明します。
「指導要録」のことは”学校教育法施行規則”に書いてある
学校教育法施行規則より、
学校教育法施行規則
第二十四条 校長は、その学校に在学する児童等の指導要録(学校教育法施行令第三十一条に規定する児童等の学習及び健康の状況を記録した書類の原本をいう。以下同じ。)を作成しなければならない。
校長は、児童等が進学した場合においては、その作成に係る当該児童等の指導要録の抄本又は写しを作成し、これを進学先の校長に送付しなければならない。校長は、児童等が転学した場合においては、その作成に係る当該児童等の指導要録の写しを作成し、その写し〈転学してきた児童等については転学により送付を受けた指導要録「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律施行令《平成二十六年政令第二百三号》第八条に規定する園児の学習及び健康の状況を記録した書類の原本を含む。」の写しを含む。〉及び前項の抄本又は写しを転学先の校長、保育所の長又は認定こども園の長に送付しなければならない。
っちゅう所です。
在学している児童生徒にたいして、通常は1年ごとに「児童・生徒指導要録」を作成します。
「生徒指導要録」は1年間の、生徒個人の学籍状態を書いた書類です。
(「生徒指導要録」は、「①学籍に関する事項」と「➁指導に関する事項」をまとめたものの二種類があります。)
その「生徒指導要録」を6年、ないし3年間「通算して簡潔に記したもの」が、「生徒指導要録 抄本」ということになります。
つまり、
生徒指導要録の抄本とは
小学校・中学校の生徒指導要録の抄本とは、「生徒指導要録」の一部を抜粋して作成した、生徒の「学籍の記録」のことです。
「生徒指導要録抄本」には、学校名のほか、生徒の氏名、性別、生年月日、現住所、卒業年月日、特別活動や行動の記録、総合的な学習の記録、教科・生活指導の過程や結果、出席の記録などが明記されます。
「要録」と「要録の抄本」のちがいは、以下リンクから〈参考書式〉をご覧ください。
指導要録の様式 文部科学省 2021年
指導要録、及び抄本の書式(PDF) 栃木県 2021年
「指導要録抄本」の使いかたは
「生徒指導要録抄本」の使い方は、学校教育法施行規則の示した通りです。
法律上、校長に作成義務があります。
(が、実際は教員がせっせと作っています。)
そして、もしも、生徒が本校(仮にA学校)から、B学校に転校したら、B学校に送らなければなりません。
その後、B学校からC学校へ転校したとしたら、B学校は『A学校の指導要録とB学校の指導要録をあわせて』、C学校へ送らなければならないのです。
学籍の足跡が「途中で途切れている」、なんてことになると困ります。
かならず、就学期間中とぎれず記録し続けないといけないのです。
児童生徒が、何校も転校を重ねると、その学校の数の分だけ、指導要録は増えていきます。
「指導要録」や「抄本」の保管期間は
「指導要録」や「指導要録の抄本」は、学校に在籍していたことを公的に証明するものです。
とにかく
いつからいつまで、〇〇学校にいましたよ。
在籍期間は、こんな感じで通ってましたわ。
勉強はいまいちだったけど、体は元気でした。以上。
みたいに書いて残すんですね。
公的書類なので、法律にもとづいて処分しなければならないので要注意。
「学籍の記録」なので、簡単に処分することは禁止されています。
保管期間がある
『児童・生徒指導要録』
学籍に関する事項=20年間保管
指導に関する事項=5年間保管
指導要録について 文部科学省より
となりますよね。。
学校教育法施行規則(昭和22年5月23日文部省令第11号抄)
第二十八条 学校において備えなければならない表簿は、おおむね次の通りとする。
一 学校に関係のある法令
二 学則、日課表、教科用図書配当表、学校医執務記録簿、学校歯科医執務記録簿、学校薬剤師執務記録簿及び学校日誌
三 職員の名簿、履歴書、出勤簿並びに担任学級、担任の教科又は科目及び時間表
四 指導要録、その写し及び抄本並びに出席簿及び健康診断に関する表簿
五 入学者の選抜及び成績考査に関する表簿
六 資産原簿、出納簿及び経費の予算決算についての帳簿並びに図書機械器具、標本、模型等の教具の目録
七 往復文書処理簿2 前項の表簿(第二十四条第二項の抄本又は写しを除く。)は、別に定めるもののほか、五年間保存しなければならない。ただし、指導要録及びその写しのうち入学、卒業等の学籍に関する記録については、その保存期間は、二十年間とする。
3 学校教育法施行令第三十一条の規定により指導要録及びその写しを保存しなければならない期間は、前項のこれらの書類の保存期間から当該学校においてこれらの書類を保存していた期間を控除した期間とする。
とにかく「学籍」の証拠は保管義務期間が長いんです。
生徒にとってだけでなく、どんな人でも、
「どこの学校に通っていたか」というのは、大事な記録なんです。
20年以上過ぎた学籍の証明はどうすればいい?
どんな生徒だったか、という詳しい学籍の記録は20年を過ぎると残りません。
でも、卒業したことは残ります。
その記録が「卒業者台帳」です。
卒業者台帳とは
”昭和34年10月5日 学校教育法施行細則”には、学校に「永久保管」するものが、2つ明記されている。
それは、ズバリ
・学校沿革誌 永年
・卒業証書授与台帳 永年
の2つだ!
【よくわからない】「指導要録の抄本」ってなに? まとめ
学校には、いろいろな書類がありますね。
今回は、「児童・生徒指導要録」についての解説でした。
名称が長いので、通常は「要録」と呼びます。
ただ、先にも書いたように、「学籍に関する事項」と「指導に関する事項」とあるので、
「学籍事項」を「要録の様式1」、「指導事項」を「要録の様式2」と呼んだりもします。
「抄本」という写しがあるのは、「複数回の転学」にそなえた「便宜的」なものでしょう。
たとえば、
小学校では指導要録を1年に一枚、最低でも六枚×2(学籍事項と指導事項)の12枚作ります。
さらに、もしも「転校を1年以内に3回繰り返した子ども」だと、
学籍に関する事項がプラス三枚、指導に関する事項がプラス三枚(ちなみに1年以内に三回の場合。年をまたぐとそれ以上の枚数になります。)と、小学校卒業までに「合計18枚」の指導要録になってしまいます。
だからそれを、6年生の卒業の節目で、「抄本」として1枚ものにまとめる。
そうすることで、学籍の記録がわかりやすくなりますよね。
(別に、18枚の指導要録で学籍記録を追っかけてもかまいませんが。。大変ですよね。)
現在、文科省も校務の電子化を推奨し、「指導要録」も「抄本」も電子化されてきているので、入力さえすればわりとスムーズに作成できるようになりました。
昔は「抄本」(写し)というだけあって、手書きで1枚ずつ作っていました。
ぼくが、教師になった頃も、すべて手書きで、何百枚も印鑑やスタンプを押してました。
時代の変化ですね。
おしまい
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